五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)

□13-キスと五条悟
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 夕焼けも落ち、夜の帳が落ちる頃。
 ゲームセンターへ移動する途中、上空の雲海を確認する五条。
 昼間よりも禍々しく呪力を帯びているのを確認すると、眉を顰める。
 
――呪いに転じるかギリギリの状態だな…

 1999年9月9日も残り四分の一日を切った。
本当に何も起こらないのか、最後に何か起こるのではないか。――人々の無意識化の緊張がピークに達してきているのだろう。

 何か“切欠”があればすぐに呪いとして顕現しても可笑しくはない程に現象は育っていた。

――呪いになるならなるで、早くしろよ……

 そうすれば即座に呪霊を祓い、今一緒にいる人物の監視を終わらせられるのに。と五条は小さく息を吐いた。



 ゲームセンターに設置された数種類のプリクラ機の中、空いていた箱体へ五条とアミは入った。

 アミはゴルフバックを隅におくと、撮影ブース内の投入口に百円硬貨4枚を入れる。
 高い電子音の合図が鳴り響くと、プリクラの撮影コースの選択画面がガラス面に表示された。

「ごめん。アミ、頭痛くてお薬飲みたいから、ごじょーさとる、さっきと同じコースと設定にして、背景選んどいて!」

 ウサギのポシェットへと手を伸ばしながらアミはそう言った。

「仕方ねーな…」

 五条は面倒だと思いつつ、先ほどアミに教えてもらったコースと設定を選択していく。

「さっきパステルだったから、ビビットでいい?」

 背景を選ぶ段階になり適当でいいかとは思いつつ、念のため確認をとる。

「……?」

 全く返事がない事を疑問に思い、五条が背後にいるアミに振り返る。

「おい、アミ、聞いてんのッ」
 
 五条が振り返ろうとした瞬間、腕を強く引き寄せられた。
 無下限呪術が解除されていることに気づき、自分を引いた相手がアミだと気づく。

 次の瞬間、アミは五条の唇に自分の唇を重ねた。

「ッ!」

 あまりの異様な事態に頭が真っ白になった五条は、反射的にアミから離れようとする。
 唇が離れる事には成功したものの、掴まれた腕は振りほどくことは出来なかった。

 アミは暴れる五条の体を乱暴に引いた。
 撮影ブースの背景にあたるスクリーンに小柄な体が当たる。
 尚も腕は掴まれたままの状態で焦る五条に、アミは足払いをかけた。

 その場で転倒して尻餅をつく幼い五条に跨るアミ。

 五条の細い両手首を掴むとそのまま背景のスクリーンに縫い止めた。
 
 体格の差から五条はアミから抜け出すことができず、されるがままとなってしまう。
 緊急事態に五条が混乱していると、再びアミが唇を寄せてきた。

「んん!」

 口内に何かが侵入してきた事に驚き、くぐもった声を出す五条。

 ぬめりを帯びたその感触に、子供ながらに背徳感から背筋がぞくりとする。
 感覚から逃げるように顔を背けようとするが、動きに合わせて角度を変えて追いすがられ、逃れることは出来なかった。

 「ん、んぅ!」

 全力で抵抗を試みるが、口内からの刺激を受けて次第に力が抜けてくる。
 段々と息が上がってくるのが分かり、初めての感覚に戸惑う。

 薄目を開けて抵抗が弱まったのを確認したアミは、再び目を閉じると、自分の口に含んでいたものを五条の口へと移動させた。

「んんん!!」

 固形物を口の中に入れられ再び抵抗を強める五条。
 だが容赦なくその小さな口を無理やり蹂躙されていくうちに、やはり力が入らなくなってしまう。

 生理的に目が潤み、顔を赤らめる五条。
 与えられる感覚に徐々に意識を蝕まれていく。

 コクリと固形物を飲み込んでしまった際、五条の意識はほぼ無かった。
 しまった! と思った次の瞬間に強烈な眠気に襲われる。

 チュッ――ワザとらしいリップ音をたてて、アミはやっと五条から唇を離した。

「えへ、ごちそーさまでした」

 混濁とした意識のなか、「ごめんね。ごじょーさとる!」と笑顔で謝罪する少女に激しい怒りを覚えた所で、五条の意識はブラックアウトした。




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